GREETING

2025年度 一般社団法人伊丹青年会議所 理事長所信

colors
~多様性を力に~

第62代 理事長 庄谷 麻美

はじめに

 私たちは一人ひとり異なる存在です。
 持って生まれた性別や環境の違いに始まり、これまで何を一番大事にしてきたのか、どんなことに興味を持ってきたのか。何に喜び、笑い、時に誰にも言えないような苦しみや悩みと向き合ってきたのか、その一つ一つが積み重なり今の私たち一人ひとりを形成しています。
 それぞれが異なる存在であり、異なる存在である他者とともにこの社会を紡ぎ出しています。
 少子高齢化や労働人口不足、止まらない物価高との賃金のアンバランスさなど私たちを取り巻く社会は多くの課題に直面しています。また、急速な価値観の変化やコロナ禍を経て、これまでの生活様式や働き方を見直さざるを得ない場面もありました。そのような状況下で、日本は多様性のある社会へと突入しています。
 その一方で、異なる存在を受け入れ理解するのは容易ではありません。相手を思い、寄り添う寛容さや想像力が必要です。 自分と違う、ということを理解せずに自分の意見を押し通してしまい混乱や対立を招いてしまうこともあります。自分とは違う、ということだけで歩み寄ろうともせずなるべく自分と似た者同士のクローズドな関係性をつくってしまい、集団で排他的になってしまうケースもあります。そうなってしまえば個人レベルのみならず、社会はこれ以上の発展も成長も見込めず、単色の色褪せたものとなってしまいます。
 私は、2011年に伊丹青年会議所に入会しました。入会当時は、ちょうど社会人としてのスタートを切り始めた頃でした。JCに入会する事自体に迷いはありませんでしたが、当時在籍していたメンバーの皆さんと年齢も大きく違う、業種も違う、性別も違う中での活動は想像以上に大変でした。例えば、委員会に参加はしてもただ座っているだけ。社会人としての経験やスキルもなく、意見も捻り出すことができません。何のお役にも立てずにいたたまれない気持ちが先行し、伊丹青年会議所としての一員である意義が見出せずにいました。そのため、足が遠のいてしまった時期も正直ありました。
 そんな折、「庄谷さんが来たいと思えるような組織にならないと伊丹青年会議所として今後の発展は見込めない」と何度も理事会で発言してくださった先輩がいらっしゃいました。私は、とても救われたような気持ちになったと同時に、伊丹青年会議所の一員としての自らのあり方を考えるきっかけとなりました。周りと必ずしも同じである必要はなく、私らしく、そして私だからこそ出来ることで貢献しようと心に誓いました。そしてこの思いを軸に活動を続けてきたからこそ今の私が存在しています。

 第62代理事長職をお預かりするにあたり、創立以来諸先輩方が紡いでこられた創始の精神や運動・活動を改めて振り返ると、敬意の念を表さざるを得ません。そして多様性という概念がこれほど世に浸透する前からも、伊丹青年会議所は多彩なメンバーを受け入れる土壌を大切に築いてこられたことに改めて感謝申し上げます。その気持ちを本年度の活動方針に重ねてまいります。
「colors~多様性を力に〜」をスローガンに掲げ、多様性を積極的に受け入れる土壌を伊丹青年会議所としての揺るぎない唯一無二の魅力と価値へと昇華します。メンバー一人ひとりがそれぞれだからこそ表現できるカラーと、メンバーが互いに認め合い、尊重し合えたからこそうまれる新しいカラーを創造することで、これからも持続可能で地域から愛される組織へとつないでまいります。

Connect to the world 国際関係委員会

 今日の課題である労働人口不足の解消策として外国人労働者数の増加傾向や、観光立国としての確立に向けた取り組み等を一例として、日本は様々な人々と関わりをさらに深め、さらなる経済発展と持続可能な国づくりを推進しています。地域社会においても同様であり、多種多様な人々との触れ合いを通じて新しい価値や可能性を創出できるまちづくりの必要があります。
 これまで培われてきた地域独自の文化や歴史などを改めて調査研究し、伊丹だからこそ実現できる世界とのつながりに対する理解を深めます。そして、これまで伊丹と世界を繋いできた行政や地域に根付いた関係諸団体とのパートナーシップを強化し、伊丹青年会議所が起点となり、伊丹を舞台に多くの市民や多様な人々とのグローバルなふれあいを展開します。
 伊丹と世界のつながりの認知をひろげることで、地域愛をさらに深めます。そして地域社会に新しい発想や価値の創出を可能とし、これからも持続可能なまちへとつながります。

心の豊かさを育む 青少年育成委員会

 多様性を生き抜くために、子供たち一人ひとりが自身のカラーを発揮することは大切です。文部科学省のデータでは、子供たちは柔軟で豊かな感性や様々な物事に対する積極性などを兼ね備えている一方で、周りを思いやる心が低下している傾向にあります。
 子供たちがそれぞれのカラーを尊重するように、周りのカラーも自分自身同様に大切に思えるような心の豊かさ育む必要があります。そのために、自らのカラーを発揮する機会と様々なカラーだからこそ成せるチームワークを発揮する機会を創出します。それらを通じて、子供たちは、必ずしも思い通りの結果を出せるとは限りません。チームワークの場合は尚更理不尽さを感じるかもしれません。
 しかし、どんな結果であっても、子供たちが結果という明確な事柄だけで物事を判断するのではなく、その前後のプロセスや周りへと目を向けることで、他者への理解や思いやりの心が育まれます。次世代を担う子供たち一人ひとりがカラーを発揮しつつも周りへの優しさや寛容さを兼ね備えることで、より多様で誰もが生き生きと輝くことのできる社会へ向けて発展します。

本質を捉える力 資質向上委員会

 多様性がある組織において、多彩な意見を引き出そうとする一方で、異なる意見同士がぶつかり合い、対立してしまうことがあります。様々な意見や考えをより輝かせるためには、物事の本質を捉える力が私たち一人ひとりにとって不可欠です。
 私たちはこれまでの経験則や固定概念等で物事を判断してしまう傾向にありますが、十分にリサーチを重ね、何が問題であるかという物事の本質を見極めることが、新たな意見を取り入れるにあたっては重要です。そして、物事の精髄を踏まえた上で、多彩な意見を十分に活用することで、私たち自身もより柔軟に考えるきっかけとなり、新たな学びの機会となります。
 メンバーがそのような資質を向上することで、周りの意見を受け入れ、尊重し活用することができます。それぞれの自己成長が合わさり、伊丹青年会議所の多様性をより魅力として引き出すことができ、唯一無二の価値へと昇華します。

より戦略的に リクルート委員会

 多様性を高める最たるものは、新しい人材を継続的に迎え入れること、つまり企業に置き換えるところのリクルーティングを効果的に行う必要があります。
 入会の動機は個々に異なります。候補者それぞれの立場に寄り添い、何を求めて青年会議所に来るのか、そしてどのようにアプローチを行うべきかというマーケティング戦略を行います。その戦略を軸に、メンバーそれぞれのカラーを発揮できるような役割を担い、組織一丸となって効果的なリクルーティングを行うことが重要です。
 組織の核は人です。どんなに枠組みが優れた組織であっても、所属するメンバーが魅力的でなければ良さを十分に発揮することはできません。そのためにもリクルーターであるメンバー一人ひとりが、「あなたがいたから入会を決めた」と思われるような言動・行動を心がけ、仲間を増やし、共に切磋琢磨し、よりカラフルで魅力あふれる組織の発展へとつながります。

視点を広げよう 広報委員会

 多彩なメンバーの成長の機会や、青少年育成事業や地域に根ざした事業など様々なテーマを持つ活動がある一方で、青年会議所は体験型の組織である側面故十分に活動や魅力をコンテンツとして伝えきれていません。
 そのため、私たちの活動をより幅広い層に向けて効果的な発信を行う必要があります。まずは、これまでの広報活動を振り返り、検証を行い、広報戦略を刷新します。それぞれのコンテンツに合わせた多様なアプローチを実現すべく、どんな層をターゲットとして、どんな内容を伝えたいのかという発信側から視点はもちろんのこと、受信側にどう伝わっていたいのかという目線も取り入れ、展開します。
確固たる広報戦略を年間通じて継続して行うことで、メンバーに向けても私たちの活動に対しての理解が深めるとともに、幅広い層に向けて伊丹青年会議所を認知していただきます。認知が広がると、組織として新たな可能性へとつながり、さらなる大きな運動へと展開するきっかけになります。

更なる持続可能な組織へ 総務委員会

 多様で持続可能な社会の実現に向けて働き方改革は大きな一歩となりました。2019年に働き方改革関連法が制定以来、より幅広い労働者層の獲得と多様な働き方が実現しました。一方で働き方の概念が大きく変わり、これまでの枠組みでは企業や組織の魅力が十分に発揮できないケースが見受けられます。
 青年会議所の活動運動を展開するにあたっても同様です。前提として、多様な組織であるほど明確にルールや規則を示し、メンバー一人ひとりが青年会議所の一員としての信頼を培うべきです。しかし多様性という枠組みで、これまでのルールや規則を随時アップデートすることは組織がメンバーに対しての必要事項であり、信頼につながります。相互に信頼関係を築くことでさらなる円滑な組織運営だけでなく、メンバー一人ひとりが継続的に活動しやすい組織へと変化を遂げます。

新しいステージへ 新入会員特別会議

 私たちは入会した瞬間から伊丹青年会議所の一員です。そのため入会歴に関係なく、全てのメンバーは例会や事業に参加するだけでなく、各委員会での役割などにも積極的に取り組む必要があります。
 青年会議所の活動は多岐にわたり、それぞれに意義があります。新入会員にとっては意義を一見では理解し難い場面もあります。そのため、伊丹青年会議所は2016年以降入会2年以下の新入会員に対してそれぞれが活動に対する理解を深め、より主体的に活動できるように取り組んできました。そこで新入会員は意義を学び、より主体的に活動や各種大会等に参加する機会を得ることができます。また、委員会ごとのタテの繋がりのみならず、新入会員同士のヨコの繋がりも通じて青年会議所メンバーとしての自覚と自信へと昇華します。
 新入会員は伊丹青年会議所を新たなステージへと導く存在です。一人ひとりがカラーを発揮し、周りのメンバーが受け入れることで多様性を確固たるものとし、より活き活きと活躍することができる組織となります。

むすびに

 “If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.” 早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め、というアフリカの諺があります。各委員会、会議体にそれぞれの役割があり、それぞれにしか出せないカラーがあります。しかし、一つ一つが独立したものではなく、伊丹青年会議所にとって欠かす事ができない大切な役割を担っています。メンバー一丸となって切磋琢磨し、互いのカラーを引き出すことでより可能性を広げ、新たな未来へとつなげましょう。