GREETING

2023年度 一般社団法人伊丹青年会議所 理事長所信

調和
~心を繋ぎ夢と情熱に溢れる未来へ~
第60代 理事長 藤原 久嗣

はじめに

 新型コロナウイルスによるパンデミックや、ロシアのウクライナ侵攻、元総理の襲撃事件など、日本で生きる20代30代の我々が経験したことがない出来事が次々と起こり、社会の様相は一変してしまいました。そして今後も我々の生活を脅かす出来事が起こってしまうのではないかと思わされる状況になりました。だからこそ、これまで様々な時代を乗り切ってきた先輩方が試行錯誤して作られてきた時代の精神や考え方を学ぶとともに、今の時代に何が必要かを考え、次代へと継承し進化させ、夢と情熱に溢れる幸せな未来を創造していかなければなりません。
「新日本の再建は我々青年の仕事である」という志のもと、1949年に日本の青年会議所運動が始まりました。伊丹の地においても誇り高き志をもった青年が集い、1963年に全国で252番目の青年会議所として伊丹青年会議所が誕生しました。そして2023年、伊丹青年会議所は創立60周年を迎えます。半世紀を超える長きに渡る歴史が伊丹青年会議所にはあり、創立以来先輩諸氏が脈々と紡いでこられた創始の精神や運動・活動に、改めて感謝と敬意を表し、明るい豊かな社会の実現に向けて、今何をすべきかを考え行動し続ける所存です。

 新型コロナウイルスの影響やDXの普及により働き方が変化し、人と人との関わり方も変わってきました。人間関係が希薄化してきた今日では、「人の調和」と「組織の調和」が必要であると考えます。
 『論語』に、「君子は和して同ぜず」という言葉があります。君子は調和をするが同調はしないという意味であり、スローガンで掲げた調和とは正にこのことを指します。調和とは主体性を持ちそれぞれの個性が心からとけ合い好循環を生んでいる状態であり、主体性がなく他人に同調するだけの付き合いとは全く異なります。

 近年、対面で会う機会が減ったことで、WEBでの会議やセミナーが多く取り入れられています。これは、移動時間の短縮や遠く離れた人とも簡単につながりを持てることなどメリットが多く素晴らしい手段です。しかしその反面、相対している人の熱量や雰囲気を感じることが難しくなり、微妙なニュアンスや感情の変化を感じ取れなくなってきています。コンセンサスを取る場合にはリモート会議は有効ですが、新しい価値を創り出す会議やお互いの意見を交換する場では、人と人とが触れ合い、実際に会って会話をすることで、相手の気持ちが理解しやすくなり調和を取りやすくなります。しかしそれは、自分の考えがあるにも関わらず妥協して相手に合わせるということではなく、考え方が違う時は徹底的に話し合い、時には喧々諤々と議論を重ね、納得いくまでぶつかりあった先に本当に相手の気持ちを理解し尊重することができます。自分の考えに信念を持ち、相手の価値観を尊重し、心がつながることが調和の取れた状態であり、このような状態でこそそれぞれの個性が発揮されるものだと確信しています。

 組織運営においても調和が生まれることによって、メンバー一人ひとりの力が発揮できることになり、新しいアイディアが創出されます。伊丹青年会議所の強みは、様々な価値観を持った多種多様な人財が集まっていることです。メンバーそれぞれが意見を持ち、互いに高め合うことで、将来の時代を先見したアイディアが生まれ、大きな運動発信につながります。

 人の調和、組織の調和、これらを高い水準で維持することで、人は大きく成長し組織力の強化につながります。まずは我々伊丹青年会議所が、高い志と熱い想いを持って行動に移すことが、まちを変える第一歩になります。各地で調和の取れた組織や団体、地域が増えていくことで、そこに住まう人々の生活が豊かになり、さらに近隣地域にも伝播していきます。5年後、10年後、さらにその先の未来に向けて豊かで皆が夢を持てる社会を築いていけるよう邁進していきます。

地域との共創 ブロック大会伊丹大会の開催

本年度、伊丹の地にて第56回ブロック大会が開催されます。
 伊丹でのブロック大会の開催は、1979年の会員大会に続き2回目となり実に44年ぶりの開催となります。ブロック大会は兵庫ブロック協議会と協働で実施することで、より大きな規模で事業を実施することができます。近年、大雨や猛暑などの異常気象や地震などの天災が多く発生し、地域のことだけでなく、自分自身の安全も考えなければならない時代です。まちのために何ができるのか、家族や身近な人のために何をするべきかを考えながら、夢と情熱を持ってこの大きな大会を成功させるために、メンバー一丸となって望む所存です。ブロック大会を開催することにより主管益、主催者益、地域益、参加者益、社会益の5つの益がもたらされると言われています。ブロック大会の開催は、伊丹青年会議所にとっても、伊丹市にとっても運動を加速させるための非常に効果的な手段です。メンバーを大きく成長させ、組織としての力を向上し、そして地域の市民意識を変革させる、まさしく地域の活性化を推進する手段となります。伊丹青年会議所、兵庫ブロック協議会、そして市民、行政、企業、各種団体の協働により、地域が一体となり、市民の方々と触れ合い伊丹青年会議所を身近に感じていただけるような運動にすると共に、伊丹の魅力を全国に発信し、周辺地域の方々が楽しんで参加する事業を展開し、大きな交流の輪を更に広げていきます。
 そして、ブロック大会伊丹大会を主軸として、伊丹市や市民の人々の未来を夢が溢れるものにするために、今何が必要かをしっかり考え、伊丹青年会議所が地域から必要とされ永続する団体になるとともに、若い力で地域を牽引し共に未来を創る運動を展開してまいります。

感謝と進化 創立60周年記念式典の実施

 新型コロナウイルスにより人と人との交流の機会は大きく減少しました。これまで先輩諸氏が長きに渡り紡いでこられた伊丹青年会議所の歴史・伝統、関係諸団体とのつながり、そして現役メンバーとOBとの関係が希薄になってしまうように感じました。しかし、これまでつながってきた心は消えるものではありません。率先して道を切り拓き、時代とともに変わりゆく地域社会の未来を見据え、まちづくりやひとづくりを実践し続けてきた先輩方の積み重ねた弛まぬ努力の結晶は、現役メンバーに引き継がれています。創立60周年を迎えるにあたり、伊丹青年会議所の歴史を連綿と紡いで来られた先輩諸氏に敬意を表すると共に、これまで多大なるご支援とご協力をいただいた多くの方々に感謝を伝え、共にまちを創る共感の輪を拡げます。
 そして、社会情勢が目まぐるしく変化する現在、まちのために、家族のために、何より自分自身のために、新たな時代を切り拓く決意を持って時流を読んだ先駆けとなる運動を発信しなければなりません。今後も関係諸団体、関係各位との連携を強固なものとし、明るい豊かな社会の実現に向けて新たな価値を創造していくことがこれからの未来につながります。我々は常に進化し続け、メンバー、地域住民が夢を持ち、その夢を実現していけるような未来を描き、心が調和する新たな次代を創造してまいります。

子供のこころを育む 創立60周年記念事業の実施

 少子高齢化が進み、まちの担い手が減少していく現代において、未来を担う子供たちはまちの宝です。ある企業が、子供を持つ親御さんに「小学生の子供が悩んでいることは?」というアンケートを実施したところ、1位は「友人関係が苦手」でした。学校では、オンライン授業が取り入れられ、どこにいても学習できる機会が増えましたが、他者とのコミュニケーション機会の低下により、人間関係が苦手という意識に拍車をかけてしまっている一面もあります。社会で生活していく中では、人と人とのつながりは切り離せないものであり、協力して物事を進めていかなければならい場面は多数存在します。特に人と会う機会が減った現在においては、仲間を思いやる力や仲間と協力する力である協調性を育むことで、子供たちは将来、社会性を備えた大人になり、まちを導くリーダーとして成長することができます。そして、自己愛や思いやり、さらには地域との関わりや愛郷心が高まり、輝く未来を描く第一歩となります。
 青少年の育成は、日本の未来を広げる無限の可能性を持っています。我々伊丹青年会議所が、子供たちの将来の時代を考え、子供たちの心を育むために何が必要か自ら何ができるかを考え実践していくことが重要です。そして子供たち一人ひとりが持っている能力を最大限に引き出していけるような機会を創出し、大人も子供たちと共に成長していける事業を実施してまいります。

新たなつながり 会員拡大

 全国的に会員数が減少傾向にある中、伊丹青年会議所では2016年以降の会員数は増加傾向にあります。40歳で卒業を迎える青年会議所において会員が増加しなければ自動的に会員数は減少していくことになるため、会員拡大は継続的に行う必要があります。
 会員拡大の最大の魅力は、共に切磋琢磨できる仲間との出会いであると考えます。様々な価値観や発想に触れ合うことで、これまでの考え方や知識をアップグレードすることができます。いつの時代も核となるのは「人」です。まちを創るのも人であり、人を成長させるのも人です。多くのメンバーが入会し切磋琢磨することで人は成長します。そしてJC活動を通して地域に対する知識を深め、人を導く資質を養うことで、メンバー一人ひとりが夢と情熱を持つ魅力溢れるリーダーとなり、リーダーが増えることでまちの未来は広がります。
 会員拡大は、一部のメンバーが率先して行うのみならず、組織が一体となり一人ひとりが当事者であるという意識を持ち、拡大活動を拡大運動に昇華させることが非常に重要です。一人ひとりが自分の得意分野を理解し、拡大活動においてどのような役割を担うのかを考え自ら行動を起こすメンバーが増えることで、拡大活動は組織内に波及していきます。そして、メンバー全員が会員拡大の意義を理解し組織的に活動することが、拡大運動へと昇華された状態です。さらに、メンバー自身が輝くリーダーとしての資質を身に付けこれから出会う仲間に自分自身の魅力や伊丹青年会議所の魅力を伝え、拡大運動を成功させ、持続可能な組織へと成長していきます。

温故知新 総務広報委員会

 組織運営に必要な要素の一つとして、ルール・規定の策定とその遵守があります。すでにあるルールや規定を遵守していくことはもちろんですが、過去の考え方やその方法が採用されていた理由を研究し、十分理解した上で刷新していくことが重要です。今年度は、60周年という節目の年であり、組織を進化させるチャンスでもあります。時代の流れに応じて柔軟に変化していくことで、組織力の向上に役立てます。
 また、青年会議所は個人の成長、社会貢献など素晴らしい活動を行っている組織です。この様々な活動は、多くの地域の方や関係者の方々に知っていただき、共感を得ることで、その活動は加速し、まちの発展につながります。伊丹青年会議所では、数年前からSNSやホームページの運用にも力を入れ、外部への運動発信をしてきました。今年度はその活動を加速させ、さらに多くの方々の目に触れ共感を得るために、有効な手法を模索しながら戦略的に広報活動を展開していきます。

真のリーダーへ 新入会員の成長

 2019年から伊丹青年会議所では、新入会員の成長の機会として別組織を作り様々な取り組みを行ってきました。新入会員は未来の組織を担うリーダーとなる存在です。新入会員が、青年会議所の意義を知り、様々な成長の機会を通して共に活動し高め合う仲間を持つことで、モチベーションが向上しJC活動にも積極的に参加できるようになります。
 青年会議所の魅力を知らない新入会員にとって大切なことは、JC活動を通して得ることができる出会いや成長の楽しさを知ってもらうことです。青年会議所の楽しさは、充実感や達成感を得ることだと考えています。いかに自分に負荷をかけ多くの物事に目を向けチャレンジしていくかで成長の度合いは大きく変わっていきます。新入会員のうちに、様々な成長の機会があることを理解し、チャレンジする姿勢を持つことが、次世代のリーダーとなる第一歩であると考えます。そこで、新入会員のメンバーに月例会や渉外活動の役割をもってもらうことで、新入会員一人ひとりに活躍する機会を提供し、当事者意識を醸成します。さらに、出向を積極的に推進し、伊丹青年会議所だけでなく、他LOMのメンバーや広い地域の人々との出会いの機会を提供します。

むすびに

 私が2016年に伊丹青年会議所に入会してから、7年が経ちました。入会当時は事業も独立して間もない時期で、人脈があったわけでもなく、事業も軌道に乗るかどうかもわからない状況でした。しかし、伊丹青年会議所で経験した7年間で、様々な人との出会いがあり、様々な成長の機会がありました。そして、今後も更なる出会いと成長の機会があります。JC活動という素晴らしい活動をしていけるのは59年間に渡り、伊丹青年会議所を支えてくださった先輩方とご協力いただいている関係諸団体、関係者の皆様のおかげです。
 暗いニュースが目立つ時代ですが、我々青年会議所の活力溢れる人財が、明るいニュースが一つでも増えるように一念発起しなければなりません。未来はどこかの誰かが創ってくれるものではなく、自分たちで準備していくものです。明るい未来を切り拓いていくという同じ志を持った同志の魂を結集させ、人と人との心をつなぎ、夢と情熱に溢れた心を地域に伝播させ、未来への可能性を広げていこう。